はじめに
- 今の会社でいつまで働けるかわからない。
- 上司が子会社に左遷された。次は我が身か、、
- 会社の業績が悪くて倒産しそうだ。
日々、こんな不安を感じながら働いている方も多いのではないでしょうか。
筆者も40代に入ったころ、同じ悩みを抱えていました。
そして、安定を求めて公務員になることを決断し、高倍率の試験を突破して無事公務員の椅子を手に入れました。
今後の仕事人生を県民のために奉仕する決意を固め、意気揚々と入庁式に挑んだのです。
まさか、その8年後には、「適応障害」という医師の診断を受けるとは夢とも思わずに、、、
この記事では、42歳で公務員になり定年まで働き続けたいと思いつつも、諸事情によりそれを諦めざるを得なかった
筆者の実体験を通して、中高年で公務員として働くことの現実をリアルにお伝えいたします。
転職というのは気軽に何度もできるものではありません。
事前に情報収集し、新たな職場が自分に合っているかどうかを、できる限り判断することが幸福な人生の秘訣です。
本記事が、民間企業から公務員に転職を考えている方のご参考になれば幸いです。
民間企業職務経験者として公務員になって、成功する人とは

安定を求めて公務員を志望する人も多いのでは?



確かに民間企業と違って解雇される心配はないね。
でもだから安泰とも限らないのではないかな。
地方自治体といっても、民間企業と同じで、勤務先として「合う」「合わない」があります。
結論から考えると、筆者は「合わない」タイプでした。
しかし、同じように民間企業からの採用組でも、働き続けられる人も、もちろんいます。
いや、大多数は働き続けられており、筆者が少数派です。
筆者の同僚で、長く働き続けられている人の特徴は以下です。


専門的な職業が活かせる人
地方公務員といっても様々な職種があります。
警察官や公立学校教諭はもちろんですが、都道府県や市区町村の職員においても、行政職以外に、研究職や、医療福祉職など多岐にわたります。
採用試験の際に専門職の区分で応募して採用された場合は、専門職の道を極めることができます。
この場合は、自分の民間企業時代の経験が公務員の職務としても活かすことができます。
自分が発揮できる能力と周囲が求めている能力がマッチするため、転職してもやりがいを持って働ける可能性が高いでしょう。
集団の中で切磋琢磨するのが好きな人
あなたは、学生時代はクラスの中でどのようなポジションでしたか?
- 生徒会長や部活動の主将を任されるリーダータイプ
- クラス内のどのグループの子とも仲良くできる八方美人タイプ
- 文化祭や修学旅行、交流試合などのイベントが好きなお祭り人間タイプ
公務員は大きな組織の中のコマとして忠実に上層部の意向に沿うことが求められる仕事です。
「納得はいかないけど、我慢しよう」という意識でも、ある程度は働き続けることはできますが、無理は少しづつ蓄積し、いつか心身の不調という形で表れてきます。
筆者は、HSP(繊細さん)気質のコミュ障であるため、学生の頃からクラスに溶け込めていませんでした。
同じように大人しくて気弱な親友としか話し相手がいないため、クラスのイベントは苦手で、休むこともありました。
このため、公務員として働き始めた直後から、
「何をするにも上司の決裁が必要。組織の上層部の意向は絶対」
「個人の成果ではなく、所属している組織として対外的にアピールできる実績作りが大切」
このような働き方に対して、学校生活のような息苦しさを感じていました。
このため、学生時代から、所属する組織において自分の役割を主体的に見つけて、やりがいを持って何かを達成した成功体験のある人は、公務員としても無理せず楽しんで活躍できると考えます。
自己開示力が高く、組織の中でも常に自分中心でいられる人
公務員は毎年、人事異動があります。
自分には異動の内示が出ず「残留組」になっても、周囲の人は変わりますし、担当する業務が変わる場合があります。
このため、年度が変わって急に、職場環境や人間関係の変化でストレスを感じるようになることもあります。
前年度に一応、イベントとして異動希望のヒアリングはありますが、希望が通る保証は全くありません。
筆者は、集団の中での自己主張が苦手で、どんなに納得のいかない仕事やパワハラ上司に遭遇しても、大声でSOSを出すことができず、ひたすら真面目に耐えてきました。与えられた仕事はきちんとこなすということしかできなかったのです。
一方、苦手な業務を任されるとすぐに医師の診断書を上司やに突きつけ、担当業務を見直してもらったり、周囲の人に任せることができる同僚がいました。
「自分は、民間企業ではやっていけないから、公務員としてとにかくしがみつくんだ」
これが彼のポリシーでした。
そのように、自分のネガティブな要素でもユーモア交えて明るく自己表現できる人は、生き残れるでしょう。
公務員に向いていないタイプの人とは(筆者の例)
では、次に、公務員に向いていない人はどのようなタイプでしょうか。
筆者が入庁してから、休職に至るまでの事実を元に説明いたします。


環境の変化が苦手なタイプ
地方自治体の庁舎は、東京都庁のように立派な建物もあれば、築40年超のボロ建築の場合もあります。
特に、昔からの建物は国の指定文化財に指定されているという理由で増改築がされずに、観光名所としては素敵だが、毎日働くには不向きな場合もあるのです。
また、改築の予算がつないため、昭和レトロな風合いを残している建物もあります。
筆者が入庁後まず配属されたのは、築40年以上の庁舎でした。
庁舎内は薄暗く、書類と埃まみれで、害虫駆除用品が目に入るほどの衛生環境です。
給湯室には、食べ物カスや茶葉が、バケツの上置かれた薄汚れたザルの上に放置されていました。
掃除スタッフは一日一回来る程度です。謎の小虫が飛び回っています。
トイレは公衆便所と同じレベル。和式が2室、簡易的に洋式に変えたものが1室で常に混んでいる。
前職は、オフィス街の一等地の近代的なビルで働いていたためその落差に歴然としました。
入庁初日にして「生理的に受け付けない」病が発病していたのです。
しかそのような庁舎に職員が詰め込まれているため、圧倒的に室内が狭い。
ロッカーは別の階の他の所属の人と二人で共同利用。
誰が使っているか分からないロッカーに私物を置く気にはなれません。
机の上は書類が山積みのため、通路を通る際にも人の書類を崩さないように気をつけなければなりません。
HSP気質な私にとってはこれはストレス以外の何ものでもありませんでした。
このため、入庁2年目には、比較的築年数が新しい別の庁舎の所属に異動希望を出して脱出を試みました。
仕事にこだわりを持つタイプ
異動希望が通り、入庁3年目からはIT系の部門に異動ができました。
ここは、民間企業出身者も多く、庁舎も比較的新しい(それでも築20年以上)でしたので、環境的には満足していました。
次なる敵は、与えられた仕事でした。
まず、引き継ぎ時点で、アルバイトのおっちゃんの作業内容を説明されました。
サーバー室の入室証を作って発行する、チーム内の請求書を集めて支払手続きをする、他組織からくる依頼事項の受付係、、そんな「アルバイト、新人が担当していた誰でもできる仕事」の一覧を、担当業務として渡されました。
え?と思いました。
「私、これでも、職務経験者としてキャリアを活かすことを期待されているんですけど、、、」
とは思いつつも、念願叶った異動ですから、文句は言えません。
できる限り自分らしく、効率的にこなす方法を考えて必死に仕事をこなしたのです。
文章を作成しても、「決裁」を経て戻ってきた紙には赤ペン先生よろしく、あちこちに手書きで文字が書き加えられています。
文書を作成する際には、自分で考えて書く必要はない、過去の文書、上司が書いた文書を探してきてコピぺするんだ、と指示されました。
倉庫のゴミ捨て担当を命じられた際には、一人でずっと薄暗い倉庫でゴミの分別を行っていました。
20年以上放置された棚からは、腐ったミカンが出てきて、悲鳴をあげてしまいました。
あ、今なら笑える思い出ですよ😄
仕事を「嫌だ」と思わないように極力意識しました。
でも「好き」とも思えません。無になる、我慢する、呪文のように唱えていました。
そんな日が一年たったころ、だんだん自分の能力が衰えていることに気がつき始めました。
メールで自分の意思を伝えるのにものすごく時間がかかるようになっていたのです。
私は、本心では与えられた仕事を受け入れられていなかったため、体の拒絶反応が始まっていました。
プライド高く、周囲に壁を作ってしまうタイプ
それらの納得がいかない仕事でも、筆者はそつなくこなそうと努力しました。
本来なら、上司に意思を伝えたり、周囲に愚痴って協力を仰ぐ必要があるべきでしたが、私はそれらを諦めていました。
公務員は基本的には、指示された所属で、上司が指示した仕事を、上司の意向に沿う形で行うことが求められます。
このため、私は、無言で与えられた仕事をこなすことを選んだのです。
だんだん無口になり、周囲の人からも話しかけられなくなりました。
このような働き方では、本人も周囲もいい影響は出ないでしょう。
ついに私は、仕事には何も求めず、「安定」「福利厚生」「厚生年金」と呪文のように唱え続け働くようになりました。
生きがいは有休を取ること、稼いだ給料で好きなものを買うことでした。
失ったプライドを、プライペートでのメリットを考えることで、バランスをなんとか保っていたのです。
筆者が休職を決意したきっかけ
驚愕の内示
そんな私がこの惰性の公務員生活の終焉を選択したのは、翌年度の人事異動の内示結果でした。
現在の職場に異動して6年が経っていました。
すでに何年も異動希望を出していましたが、諸事情により叶っていませんでした。
これが限界と感じていた私は、異動希望の回答を練りにねり、全身全霊をかけて異動希望をアピールしてきました。
しかも、所属の異動は叶わぬだけでなく、「グループリーダー」という役割がついてきました。
倉庫内のゴミ捨てなど、新人レベルの仕事しか任されていなかった私は、当然ながら、グループ内の他メンバーの業務などあまり把握しておらず、それどころかサブリーダーとしてのスキルや知識もありません。
聞いた瞬間は、唖然としてしまいました。
咄嗟に「異動希望とあまりにも違いすぎる。さすがに無理です。」と上司に伝えたところ、返ってきた言葉は
「自分は組織としての決定事項を伝えているだけだから、何もできないよ。与えられた仕事をするしかないでしょ」
でした。
葛藤と決断
それでも一週間は、どうしたら「与えられた仕事」をこなせる自分になるかを、模索し続けました。
考えて考えて考えました。
「与えられた仕事」をこなしている自分を、シミュレーションをしてみました。
その結果、失敗したり、怒られたり、周囲の人から嘲笑されるイメージがぐるぐる回るようになりました。
新年度のことを考えると、怖くて夜が眠れなくなりました。
頭の中が不安でいっぱいになり、他のことが手につかなくなりました。
「どうしよう、どうしよう、どうしよう」呪文のように唱えている自分がいました。
一番大切なことは、自分を守ること
どれだけ考えても、4月1日からも「与えられた仕事」をこなしている自分のイメージは浮かびませんでした。
まず、朝起きられないでしょう。
なんとか起きて職場に行き、机の前に座ったところで、不安と恐怖でギチギチになった頭では「グループリーダー」としての職務はこなせないでしょう、。
そうか、心と体が無理だと言っているんだ、そう気づきました。
このまま、負け戦で戦い続けても、自分にとっても、組織にとってもいい結果にはならないでしょう。
ギブアップしよう、無理だと言おう。
ここで、ずっと手の中に温めていた、最後のカード「県庁辞める」を出すことに決めたのです。
公務員の休職率



実際の公務員の実際の休職者はどれらいいるんだろう。



近年は年々増加しているんだ。
全国の国家公務員および地方公務員(行政職)における休職率は年々上昇傾向にあり、その多くが病気(特にメンタルヘルス不調)によるものです。
国家公務員の休職率(一般職国家公務員)
令和5年度人事院の年次報告書によれば、一般職の国家公務員において1か月以上の長期休職(病気休暇を超えて休業した者)の発生率は約2~3%です。主なポイントは以下の通りです。
休職者の割合(発生率)
令和3年度(2021年度)に長期病気休職となった職員は6,500人で、これは全職員数の2.32%に相当します。
この長期休職者率は、直近の前回調査(平成28年度)から大きく上昇に転じた数値です。
休職理由の内訳
傷病別に見ると、「精神及び行動の障害」(うつ病等の精神疾患)による休職者が4,760人と最も多く、長期病休者全体の73.2%を占めました。次いで多いのは「新生物」(がん等の腫瘍性疾患)で7.1%、「循環器系の疾患」(心疾患・脳血管疾患など)で4.1%となっており、精神疾患以外の各疾病による休職者の割合は一桁台にとどまっています。
メンタル休職の増加傾向
その後もメンタルヘルス起因の休職者は増加しており、令和4年度(2022年度)には精神及び行動の障害による長期病休者が5,389人(全職員の1.92%)となり、前年度より629人増加しています。特に20代など若年層で長期病休者率が高い傾向が指摘されています。


地方公務員の休職率(行政職・全国平均)
地方自治体の職員(行政職)についても、全国平均で見た休職率は国家公務員以上に高く、増加傾向にあります。
一般財団法人地方公務員安全衛生推進協会が実施した最新調査(令和4年度)によると、主な状況は次の通りです。
休職者の割合(発生率)
令和4年度(2022年度)に1か月以上の長期休務となった地方公務員(行政職)は推計約2万5千人に上り、職員10万人あたり3,254.6人(約3.25%)の発生率でした。この値は前年度(令和3年度)より7.85%増加しており、地方公務員における長期休職者率は近年上昇が続いています。
休職理由の内訳
長期休職者の主な理由は国家公務員同様に精神疾患が最多で、令和4年度は精神疾患(「精神及び行動の障害」)による休職が職員10万人あたり2,142.5人(約2.14%)と報告されています。これは前年度より12.6%増加した数値で、全長期病休者数の65.8%を精神疾患が占める計算になります。残りの約34%ががん等の身体疾患や負傷等による休職ですが、個別の疾病カテゴリーごとの割合は精神疾患よりもはるかに低い水準です。(例えば腫瘍・循環器疾患など各数%程度)


一般財団法人地方公務員安全衛生推進協会「地方公務員健康状況等の現況の概要」より
以上のように、公務員の休職者数・休職率は全国平均で見ると増加傾向にあり、その中でも精神疾患による休職が大半を占めることが最新の公的データから確認できます。
国家公務員・地方公務員ともにメンタルヘルス対策の強化が重要な課題となっていると言えるでしょう。
まとめ
筆者は残念な結果になってしましましたが、民間企業からの転職組でも、生き生きとやりがいを持って働いている公務員も大勢おります。
また、公務員は、安定、給与、福利厚生というメリットも多いことも事実です。
もし、あなたが、我こそは!という熱意をお持ちでしたら、ぜひ、公務員にチャレンジすることをおすすめします。

